Next Young Artist Award2024 アート&ニューメディア部門 奨励賞・NEW CHITOSE GENIUS 賞 受賞作品。
「モビル文学」シリーズは自転車を使った移動並びに投影技術を文学表現と融合させることを目指し、映像装置に改造した自転車を用いて各街をテーマにした小説をキャンバスとしての都市に描き出す連作である。本作『モビル文学 大垣ロストデスティネーション』では、大垣を舞台に執筆した小説を映像化し、自転車に乗って夜の大垣をサイクリングしながら地面にテキストを投影した様子を映像作品として発表した。




電車に乗って都会へ行くと、自分以外の全ての人間が幸せそうに見えた。だからまたこの街に戻って来た。絶望を遠ざけるための自傷行為。休まず働く。いつか死んだらいくらでも休める。
段々読みたい本も観たい映画も行きたい場所も無くなってきた。ゼロになることを恐れている。
この世界をよいものと信じるための、光を固く握り潰している。
自転車のペダルを漕ぐように躁鬱の波を繰り返す。十二月七日木曜日の夜。サドルを踏み台にして東海道線の線路へ飛び入ろうとする影を見た。ひょっとしたらあれは自分だったのかもしれないと、毎朝反芻してから珈琲を淹れる。彼も俺も行き先を失って、ここではないどこかを夢見ているはずだ。
Touch it, bring it, pay it, watch it.
Turn it, leave it, start – format it.
Technologic, 1.3kmの往復。
酔杯。喫煙。何も現状を肯定しない行為に現を抜かし、鬱屈としている日々を記録の中で脚色をして明日の自分に些細な嘘をつく。去年の春も去年の暑い夏も去年の短い秋も去年と今年の冬も、結局いつもこんな感じだ。ほんの一瞬汚れた両手で有り余る幸せを掴めたような気がしたが、実は一人で踊っているだけだった。
その灯を消しておくれよ。これからの自分がどこで何をしているのか見当さえ付かない。
未来の人よ。君は揖斐の山奥で円空仏を彫っているかもしれない。下北沢の路上で石を売っているかもしれない。胡志明の繁華街で薬漬けになっているかもしれない。紐育のタイムズスクエアでゴッホが描く夜空のような光を見ているかもしれない。片道切符で土星を目指し、宇宙の塵と戯れているかもしれない。
祖母が死んで帰る家を無くした。三十歳の誕生日の前日にイオンのサイゼで赤ワインを飲んでいた時もこんな調子だった。結局感情の切り売りな訳だが、誰もが問題を抱えているのに、それが真に迫らないのはきっと自分ごととして捉えていないからだと思う。パルプ・フィクションを観た。プレミアムモルツを飲んだ。無職の時も多額の納税中も、絶対に発泡酒を買わない卑しさが自分にはある。
その次の日の夜のこと。僕はひまわり畑に忍び込んで、花と花の隙間を走り回った。
花弁をむしった瞬間に冷静になって、もうこんなことはやめようと思った。ここは川崎サウスサイドじゃないし、旅券の期限は切れている。
「それは十分に尊重されるべき人生です」とChatGPTは云うがこの悲しみは一体何だ。
2024 映像