モビル文学 熱海ナイトフォールエレジー

ATAMI ART GRANT2024にて作品展示。
「モビル文学」シリーズは自転車を使った移動並びに投影技術を文学表現と融合させることを目指し、映像装置に改造した自転車を用いて各街をテーマにした小説をキャンバスとしての都市に描き出す連作である。本作『モビル文学 熱海ナイトフォールエレジー』では、熱海を舞台に執筆した小説を映像化し、自転車に乗って夜の熱海をサイクリングしながら地面にテキストを投影した様子をインスタレーション作品として発表した。

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音もしない夜の川沿い、駆ける。辞めたはずだった煙草。また吸ってる。愚かだね。こうして、ここにいると、住み慣れた街、どこかで見た夕景。遠く。疲労の塊服着て自転車に乗る。風を浴びる。街へ出ると、自分以外の全ての人間が、幸せそうに見えた。

「恥の多い生涯を送って来ました」

熱海来て『人間失格』二度読んだ。太宰、起雲閣籠り書いたと聞いた。二度行った。今日みたいな夜。夜警。自転車を漕ぎ、考える。熱い湯浸かり、気分少し良くなった。毎晩徘徊繰り返し、孤独・カルマ背負う夜明け迄。

太宰死ぬ三ヶ月前。起雲閣。和室大鳳。泊まってたという。部屋の前。日本庭園。松の木。窓から見える。その松、太宰も見ただろうか。想像も草臥れ。理由なく何度も海へ行った。海は見ない。その先に在る街。知らず。暗いところ迄星が光る。これからも、これ迄の事も分からず。一切の救い無くとも前へ。

転がり続ける、LIKE A ROLLING STONE.

街のうるささ。愛おしいが、いつか滅ぶ。人の定め。燃え尽きて、灰になって、自分には何が残るの。湯を沸かし、言葉を飲んだ。空咳ばかりしている 3333.

真・偽・真。白黒付けてまた白黒。天気読み、束の間の快晴。湯の音。白黒もない遊泳。いずれ疲れ、眼を閉じる。チャリ。叫びながら乗ったら全ての言葉。風に吹かれ消えた。言の葉探し、ペダル漕ぎ、沈む光線、流れ、穏やかに、心映す、拭えない重荷抱えて。何者でもない顔を洗う。

いま、思い出す。初めて熱海に来た、三歳 or 四歳。記憶(→写真は見つからなかった)。生まれて初めての旅行。だったと思うが知らん。新幹線大好きだった僕は、父、パチンコ、大勝した翌週、From 新横浜 To 熱海。日帰りで。たぶん。数十年経ち、僕も勝負師に。勝つまで手放さず執着続ける。タチの悪い、賭け狂い。全部捧ぐよ。

どんなに努力をしても、月並みな幸せ、縁遠い自分は、修羅となり、何かに打ち込み、絶望そそぎ凡ゆる虚無を振り壊してきた。つもりだった。古い写真を見返す。そこに映るのは痛い痛い痛い痛い痛いくらいの青い春で、僕はその手、差し伸べ(られた)手を握り返す(べき)だったし、万策尽くしてEverything's gonna be all rightな方法を探すべき(だった)。無限。

人間、失格。もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。と云えるほど疲れてはない、が。蒸気沸く。湯に浸かる。入水。誰もいない夜の坂道下り。そうだ、昨日。ソーダ水飲んで。切ないね。

空を見上げれば遠く。三日月と金星。付かず離れず。交わること無き・亡き記憶を濯ぐ。ベッド。潜れば悩み5秒で朝。月が綺麗の意味を教えていた頃。睨むように本を読むことでしか自分を変える術を知らない。

どうして?いつも腹が減る。「面積辺りの飲食店の数。新宿と同じ」と聞いた。箸で掻き回す。まだら模様を。地図開き二本指でスワイプ。言語的楼閣無限之インターフェイス。宵。酔い。良い。誰かに望まれる人生が良かった。全て束の間の余暇か?全財産注ぎ込めば幸せになれるか。まだ干物肴に酒飲んでないし、熱海銀座。回り尽くせない。流れたい!道端で温泉卵作りたい!とWikipedia。書いてあった。

底から手を振ってくれるか。風を集め、幽けき光、浴びて今!僕は!嘘ぶって微笑う。車輪は廻る。その手、自分に向けて振ってくれたら良かった。誰に話してる?残響。

空鳴る度に新しい色灯る夜だ。確かなこと。闇掻き分けて近付いた夜だ。やがて目に映る光の粒。少しずつ滲む。夜だ。点・が線になって伸びて・・・・・・・・、視点逸らす。その全て、消えて数秒数分前に見た光景。反芻。これは物語のことじゃない。A Day In The Life.この世界を少しでも讃えるための呪⽂唱える。

「真冬を知らざる 常春熱海」謳う。ナイトフォールエレジー。何処へ逝く。

今日とて良い一日だった!違いない。明日も明後日もスケジュール。ホワイト。何も予定なく、でも世界は回る。ただ噛み合わせが悪い。それだけなのだが、ここへ来るまで、自分の居場所。どこにも残されていないような気がしてた。Somewhere→熱海。どこまで遠くへ逃げても、自分からは逃れられない。

だから太宰、読んでも、分かる時と分からない時あるが、よく分かる。好きなことは増えた。その分嫌いなことも増えていった。それに今も目に映るほとんどが嫌いなままだ。死に物狂いで生きて、生きて。なおも孤独な地平。立ち続けろよ。薄皮一枚。死線越えない。まだ生きる。

 月 日。人間、失格。もはや歌や詩にも、タイトルにもならない。

森羅万象。渾然一体になれる。まだ賭けれるもの。⼀つでもあるか。喜びもない。悲しみもない。ほんの一瞬汚れた両手で有り余る幸せ、掴めたような気がしたが、実は一人で踊っているだけだった。

人生、有限。ゆえに。何かを得ることはそれ以外の全てを失うことで、何かを失うことはそれ以外の全ての可能性を得ることで、その先に在る生とも死とも云えない状態。夢想する。あんた、すぐそこにいるんだろ。

額から汗が噴き出た。両の手、緊張で震え。ありがとう、さようなら。ありがとう、さようなら。

結末、決めていた。この物語終わらせるために。自転車と海へ・・・道化だ。

2024 映像インスタレーション

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